第2回 教員 安田氏との対談
本日は羽鳥の昔の同僚であり、学校の教員である安田さんにインタビューをいたしました。
羽鳥:安田さんとコンピューターとの出会いはいつ頃でしたか?
安田:かれこれ40年くらい前と思います。PC9801当たりだったように思います。MS-DOSの最初です。
羽鳥:その頃のPCは全然、覚えてないですね。確かに私の自宅にもありましたけれど。一体、何をしてたのかも。プリンターも自宅にあって、簡単なゲームくらいはありました。一太郎を利用してxx会のお知らせ、みたいなチラシを作ったりしてました。
安田:まあワープロ専用機みたいな使い方でしたね。あとはニフティーとかPC-VANに接続してパソコン通信ばっかりやってました。それらが今でいうSNSの代わりみたいなものでした。モデムとか、今の人はほとんど知らないでしょうね。カラオケデータなどは有線放送経由でMIDIファイルダウンロードして、PC9801で再生してましたよ。今はYoutubeがあるので、MIDIファイルなどを利用する機会もほとんどないでしょうね。
羽鳥:安田さんに最後にお会いしたのがコロナ禍前でしたけれど、コロナ禍中は学校でも大変な変革が求められたものと思います。例えば、学校で欠席者がいたとして、その欠席者は今日の授業の内容をどのようにして確認するのですか?欠席したらそれでもうおしまい、ということになりますか?
安田:学校の場合は、個別でフォローできる場合は生徒と教師でやり取りできるアプリケーションを使います。質問に関しても生徒と教師の間でロイロノートでやり取りいたします。
羽鳥:それは必ずやっているものですか?それともある一定基準のもとに欠席者用のフォローをするかどうかを実施するルールみたいなものはあるのですか?
安田:それは担当者次第です。定期考査などにかかわるような場合や、観点別評価にかかわるような場合には実施するようにしています。例えば小テストなどを評価の対象にいれる場合です。
羽鳥:例えば弊社が取引している教育機関の場合、授業内容のすべてを録画して欠席者に配信しています。なので、かりに体調不良で授業を欠席したとしても授業は各生徒のご自宅で確認できるのです。
安田:これからはそういう時代になると思います。こちらの学校ではまだシステムが整っていない部分があります。ただ、若干、著作権の問題なども絡んでくるような気がします。コロナが蔓延していた最中は学部によっては録画したデータを生徒に配信する、という作業を行っておりました。ただ、そのデータは他には流さないように、生徒に確認をしておりました。
羽鳥:そうですか。ただし、ご利用されている生徒側で、おそらく動画共有プラットフォームにupする人が必ず出てくる、ということは常々思っております。
安田:授業を行った側からすれば、その内容には教員側に著作権があると考えられます。なので、生徒側で勝手に動画共有プラットフォームにupすることは違法行為になると思います。
羽鳥:コロナ禍の時は、授業はどうされておりましたか?やっぱり学校に通学するスタイルでしたか?
安田:コロナ禍の時は、オンラインというよりは動画を撮って生徒に送る、というスタイルでした。
羽鳥:コロナ禍の時に取引先様の生徒の一人から伺ったのですが、ZOOMでオンライン授業を行うものの、ほとんどの生徒が出欠席を確認した段階でカメラ画面をOFFにして漫画を読んだり別のことをしたり、ということをしていた、と伺いました。やっぱり出席確認とかもあの頃、すごくいい加減だったような気がしますし、教育の質、という意味でもかなりいい加減だったような気がします。
安田:それは本人の善意に頼るしかない部分ですね。
羽鳥:例えば大学の授業に関してもオンラインで行うとしても、最初に出欠席確認をする2分程度だけアクセスして、その後にカメラを閉じてどこかに行ってしまう、といったことが可能です。果たしてそれで授業に出席していました、と言えるのかどうか、です。
安田:こちらの学校の場合は、ほとんどの場合、授業を聞いていないとわからない課題を出して、その課題を丸付けなどのチェックして、という作業を行います。オンラインだけだとその場だけで終わってしまいますが、そのあとの結果を残す、というワンクッションがあれば解決可能です。それがロイロノートなどのアプリであったりするわけです。
羽鳥:まあ、それでも友人などに【ここの答えは何?】みたいなことは出来てしまいますよね。
安田:まあ、そういったズルはできますね。
羽鳥:やっぱり目の前に生徒がいるのと、画面上に生徒がいる、ということの違いはどこかしらにありますね。その部分を何とかソフトウェア部分とシステムの部分で解決するのが弊社の課題と考えております。
羽鳥:コロナ禍前と後で学力の違いはありましたか?
安田:ちゃんと勉強している生徒とそうでない生徒の差が極端に開いたような気がします。私立だといわゆる手取り足取りやり方を教えて、という方法が普通なのですが、自分で勉強の仕方を見つけて、自分で勉強を進めて、ということができる生徒が伸びました。つまり、今までの学校のシステムを転換する頃にきています。先生がやり方を教える、という授業よりも生徒がやり方を考えて先生がそれを確かめる、というスタイルです。教育評論家の講演で聞いた話ですが、その内容は、ネイティブスピーカーが生徒に意図的に下手に英語を教え、生徒側はこれではだめだよね、と気づかせる。そうして生徒側は自ら自分の方法を考える、ということでした。先生がすべてを教えてしまうと生徒が初めての問題に当たった時に正解が得られない。知りたい、という欲求を生徒に持たせて、正解が得られたという成功体験と一つ一つ積み重ねさせて次に進ませる、というのが今のトレンドです。それがいわゆるアクティブラーニングです。教員もコーチング技術を磨く必要があります。
羽鳥:数年後、テストは全部タブレットになるようです。やっぱりタブレットなら採点が楽で速いじゃないですか。まあ、1秒未満で得点の算出はできますね。
安田:こちらでは採点ナビ、というアプリケーションをつかっています。生徒の紙の答案をスキャナーで記録しサーバーにUpし、サーバー上のデータを各教員振り分けて、A教員は大問1、B教員は大問2を採点する、という方法です。そうすれば各問題自体の正答率などの計算も楽ですし、その他、自動的に採点をしてくれる、というモードもあります。
羽鳥:採点する側にとって一番いいものは、解答の記載を全部マークシートにして、解答をタブレットに記載させる、という方式と思います。それをコンピューター側で自動的に採点する。そうすれば採点する側の負担はほとんどありません。ただ、その場合、記述式の問題をどのように扱うべきか、が議論の対象となりますね。記述式は完全になくなってしまっていいものなのだろうか。
安田:記述式問題を自動的に採点できるようになる、というのはまだ数年先の話になると思います。openAIのchatGPTの日本語化はまだ遅れをとっている模様です。文部科学省所管の国立情報学研究所では、【東ロボくん】の開発をしております。旧センター試験や東京大学の入試問題を解かせて、どのくらい正解が得られるのか、合格させるレベルに達成するということを研究しているのですが、記述問題にはまだ改善点がみられるようです。なので、日本語の特性をコンピューターが学習しきれていない、ということになると思います。ただ、かなり精度はよくなっているようです。例えば、今、この会話の内容を録音して、それをchatGPTに入力して【この内容を要約してください】という命令を実行すれば、今はそれが出来ます。だけれど、小論文の問題の内容を要約してください、といったときに完璧ではない。とある小説を簡単に要約してください、ということに関してもまだ間違いがある。日本語を専門にしているAIの技術者と日本語の専門家がまだ少ない、というのも背景にあります。英語に関しては精度は高いそうです。
羽鳥:マークシート問題と記述式問題の決定的な違いは一体、どういったところなのでしょうか?
安田:自分の言葉で表現できるかどうか、という点です。あとは語彙力の問題です。
羽鳥:でも、マークシートの正答が高い人は結局、技術式問題でも正答率が高いように思います。
安田:まあそのあたりは東京大学の現代文の問題をご検討していただけるとわかると思います(笑)。単なる抜き出しでは正解は得られないです。自分の言葉で言い換えないといけません。言葉を認識して理解するのと、自分でその言葉を別の言葉と結び付けるのは別のことであって、最終的には表現力が違ってきます。表現力はコミュニケーション能力にかかわってきます。相手が言っていることを聞いて自分なりに解釈してそれをアウトプットする、という作業です。それは、訓練が必要です。
羽鳥:本日はインタビューを受けていただきありがとうございました。すごく勉強になる良い機会でした。弊社でもタブレットを用いた採点方法のシステムやオンライン講義のシステム開発をしたいと思いました。ありがとうございました。
インタビューアー 羽鳥幸代
2024/07/28
町田 牛まさにて